柔道部の練習で生徒が亡くなったことについて

※下記内容は遺族の方を責める内容ではありません。似た様な事故を無くす為にこうした方が良いんじゃないかという提案です

 

夜のニュースで柔道部の練習中に亡くなった中学生のことを伝えていた

掻い摘んで説明すると

「喘息持ちの柔道初心者が強豪柔道部に入部した結果厳しい練習中に亡くなってしまった」

ことが問題視されていた

テレビ側が言いたかったのは「初心者にキツイ練習をさせた結果死なせてしまった。可哀想」ということなのだろうが気になる点がいくつかあった

 

まず、強豪校の練習に初心者が入るという点だ

僕は中学の時、田舎では強豪の部活に初心者で入った

県大会以上の大会まで勝ち進む事があり、部活の時間は朝の6時から、夜は9時までというキツさだった

勿論先生からは理不尽に殴られるし、部活の休みは実際1月1日と8月15日の2日だけだった

こうして文字にし、自分に子供がいたら入部を勧めるかと言われると全く勧める気はない

が、僕自身やらない方が良かったかと言われると不思議とやらなければ良かったとは思わない(無駄にした時間の長さにそう思いたいだけなのかもしれないが)

それは自分で初めて大きな選択をした事が嬉しかったからかもしれないし、実際大きな大会まで出られたのは過酷な練習に耐えられたから、あの過酷な練習を耐えたお陰で少々のキツイ事には動じなくなったからかもしれない

番組を見た印象ではお母さんが顧問に相談した結果、顧問からその子に合わせた指導をするから大丈夫と言われ安心して入部させたそうだが、強豪校にいた感覚からするとこの発言は保護者を前にした体の良い発言としか捉えられないし、保護者はそこら辺を斟酌しなければならないだろう

当然の事だが小学校を卒業したばかりの子供が部活に入りたいと言ってきたのに、はっきり入部しない方が良いと言う部活の先生は普通いないだろう(公共の場である学校であるし、断った事で起こる後々の問題を考え断らないだろう)

その子に合わせた指導をすると言うのが精一杯の対応だ

この先厳しい練習が待っているとは考えられなかったのだろうか?

強豪校の練習を緩くしてくれるなんて信じられるだろうか?

体が弱い子がちょっと体を動かす為に入る部活ではないとは思わなかったのだろうか?

お母さんを責めているわけでは勿論無い

ただ、強豪校の部活に入って練習を初心者向けに合わせて貰えると本気で思っていたのであれば

「強豪校の練習はキツイから初心者あるいは体が弱い子は入るのはやめた方が良い」

と啓発して欲しい

同じ様な考えの保護者の方は他にもいらっしゃるだろうから

もし亡くなった子が強豪校の部活に入ったのであれば、心ある指導者なら

「それだけの覚悟をして入部してくれたんだから、最初は出来なくても将来的には周りの子と同じレベルまで上がれる様に指導してあげよう」

と思い、指導には周りの子以上に熱が入るはずだ

もしそう言った環境を望まなかったのであれば、やはり強豪校の部活は場違いだと思う

例えばプロサッカークラブのユースチームに初心者が入って緩い練習をすることは普通考えられないし、高校野球やその他の部活でも状況は同じだ

ユースチームの様にセレクションがあれば今回の様な事故は防げたかもしれないが部活という公共性がこれを妨げている

大学の体育会とサークルの違いと言えば分かりやすいかもしれない

強豪校の部活は大学の看板を背負って上を目指す体育会、弱小校の部活はサークルに近い

もしどうしても柔道がしたかったのであれば、弱小柔道クラブを部活とは別に探すのがベストだったろう

亡くなった時、乱取りをずっと続けていたとの事だが乱取りは基本練習と言っても良いだろう

受け身さえ取れればそれほど難しい練習ではないからだ(勿論受け身が全く取れないのに乱取りをさせていたのであれば問題だが、これも程度の見極めが難しい)

体調が悪い中乱取りをやらせていたじゃないかという意見もあるだろうが、強くなる為の部活に入り本人が続ける事を望んでいたのであれば、自分が指導者だったら練習を止められたかと言われると自信は無い

自分を追い込み限界にチャレンジしてフラフラになる事と命に関わるほど体調が悪くなってフラフラしている事の見極めもまた難しいからだ

上手くなる為には、上手くなりたければどうしても自分の限界を超えなければならない

僕自身フラフラになったり、意識が飛ぶ事も何度かあった

裁判所が村に命じた賠償が3700万円程と比較的低額だったのも過失の認定が難しかった事の表れではないだろうか?

部活の目指す方向性と保護者や生徒の目指す方向性のミスマッチを無くす様にしていって欲しい

 

2つ目は遺族の講演活動だ

無論、部活中に亡くなった子の母親の気持ちを教員の卵に語ることは立派なことで必要だろうし、語られた方にとっては強い戒めとなるだろう

将来部活を指導する時には様々なリスクを抱えて指導しなければならないことも実感出来るだろう

しかし僕はお母さんが述べていた様に同じ様な事件を2度と起こさない様にすることを願うのであれば、講演活動に部活や武道の必修化を廃止するといった内容を盛り込んで欲しい

(テレビで取り上げなかっただけで既にやられているのかもしれないが)

根本的に武道に事故はつきものだ

現に学校で武道が必修化されてからというもの、事故の件数が増えているのは番組でも取り上げていた

武道による事故を無くすにはやはり武道の禁止しか考えられないし、武道の必修化などあり得ない

まして授業での必修化ともなれば部活とは違い自分の意思とは関係なくやらされてしまうのだから

やはり部活というシステムがあって良かったと思う僕でさえ、そろそろ新しいシステムを作るべきだと思う

 

亡くなった子と同じ様な事故を今後二度と起こさない為にも、部活動と生徒のミスマッチの解消、部活動の廃止も視野に入れた検討をして欲しい

 

おしまい